「弱み」狙われる性的少数者たち 当事者が訴える「命の問題」

「性的マイノリティーに対して偏見に基づく不当な取り扱いをしない」。これは2017年、刑法の性犯罪に関する条項が改正された際の、付帯決議の文言だ。制定以来110年ぶりとなる改正では、LGBTQなどの性的少数者が受けてきた偏見への反省から、「被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において」性的少数者を正当に扱うことが強調された。改正から4年。再改正の議論も始まる中、決議がうたった理念はどこまで実現したのか。被害当事者や専門家の証言から、置き去りにされがちな性的少数者の性暴力被害の現状について、前後編2回でお伝えする。【藤沢美由紀/統合デジタル取材センター】

 ※この記事には、性暴力に関する具体的な記述があります。

元記事は下記
2021/3/28 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20210328/k00/00m/040/014000c

レイプでも「被害届なんて出せない」と警察官が一蹴。見過ごされる性的少数者の性被害

性被害を受けたのに、警察や相談機関の窓口で差別的な対応を受けることも。性的指向や性自認(SOGI)の視点を盛り込んだ法律や制度が求められています。

Machi Kunizaki/Huffpost Japan
浅沼智也さん

「トランスジェンダーのことはよく分からないし、そんな複雑なケースは想定されてない。被害届なんて出せないよ」

レイプに遭い、相談した警察署で、浅沼智也さんは男性警察官が放った言葉に涙をこらえきれなくなった。

「トランスジェンダーの自分は、レイプされても相談する場所はなく受け入れてもらえない。死んだ方がいいかなと思いました」

警察や相談機関の現場で、性的少数者の性暴力被害が見過ごされ、差別的対応を受けることさえある。

(※この記事には、性暴力の描写が含まれます)

元記事は下記
2021年03月20日 HuffPost Japan
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6052a41ac5b6e32eb4af0835

トランスジェンダーの現在地伝える映画 当事者が制作

性別の枠を超えて生きるトランスジェンダーの姿を伝えるドキュメンタリー映画「I Am Here(アイアムヒア)―私たちはともに生きている―」が21、26日、大阪市内で上映される。映画やテレビで描かれるトランスジェンダー像に一石を投じようと、当事者が制作した。

現在は男性として生きる浅沼智也さん(左)と女性として生きる宮田りりぃさん(C)I Am Here―私たちはともに生きている―

 「今はLGBT(性的少数者)って言葉がだいぶ広まってきたけど、それでいろんな問題が解決してるか」

 生まれた時は男性で、今は女性として生きる関西大研究員の宮田りりぃさん(39)がカメラに向かって問いかける。映画の中で問題提起されているのが、2003年に成立した性同一性障害者特例法の是非だ。

 これによって、戸籍の性別を変えられるようになった。ただ、変更には、20歳以上、未婚、未成年の子がいない、生殖機能がない、変更したい性別に外性器の形が合っている、という要件を満たさなければならず、問題視されてきた。

 戸籍の性別を変えたいトランスジェンダーには結婚し、幼い子を育てている人もいるからだ。生殖機能を奪い、外性器を変える手術を望まない人もいる。

 法制定の過程では、法律の成立を優先すべきだという当事者と、要件が見直されないなら法案を取り下げるべきだという当事者で、賛否は真っ二つに割れたという。一方、法律ができたことで性別を変えて幸せになった人もいる。

 映画には当事者16人が登場し、自ら望む性別で生きることの意味、戸籍の性別を変えるために求められる手術の是非などを語る。

 監督を務めた浅沼智也さん(31)は「トランスジェンダーの間にも異なるさまざまな立場があることを知ってほしかった」と話す。

 浅沼さんは幼い頃から男女に二分されることに違和感があり、中学生の時は自分が女性であることが嫌だった。高校卒業後、18歳で性同一性障害と診断され、23歳の時、手術を経て戸籍上の性別を男性に変えた。

 「生きづらい自分がここにいるのに、いないことになっている」。映画やテレビでトランスジェンダーの登場人物を見るたび、そう感じてきた。画面の中にいるのは「可哀想なヒロイン」か「笑いのネタにされるオネエ」。当事者以外の目線で描かれた悲劇や喜劇ではなく、実生活で直面する課題を当事者目線で伝える映像が見たいと思った。

 本職は看護師。映像制作の経験はない。「待っていても誰も作ってくれない」。映画監督2人に教えを請い、仲間5人で制作チームを結成した。自ら出演者の一人になり、監督とプロデューサーも務めた。

 「当事者にエールを送り、当事者以外の人に現実を知ってもらう」。それが映画でめざしたことだ。性同一性障害者特例法の改正に向け、議論が高まるきっかけになればと願う。

元記事は下記
2021年3月16日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASP3H6X1WP2QPTIL055.html